硬化剤のトラブルについて、もう1つおさえておきたいことがあります。
それは湿気との関係性です。
この記事の目次
<塗料の硬化剤と湿気について>
<塗料を扱うときの望ましい気象条件とは>
<まとめ>
<塗料の硬化剤と湿気について>
以前お伝えしたとおり(※以前のコラムのリンク)塗料の硬化剤は、塗料を硬め、耐久性のある塗膜を作るために重要な役割を果たします。硬化剤の種類によって、湿気との関係は異なります。
湿気と硬化剤の関係
・湿気硬化形:空気中の水分を吸収して硬化するタイプ。乾燥が早く、手軽に使用できますが、湿度が低い
環境では硬化が遅れる場合があります。主に接着剤などの硬化や促進に使われる。
・架橋反応形:湿気に触れると、硬化不良や変色・白化(白濁)を起こす可能性があります。湿度の高い環境
での使用には注意が必要。二液の塗料に多く使われる。
湿気による影響
・硬化不良:湿気が多すぎると硬化剤が十分に反応できず、塗膜が弱くなってしまうことがあります。
・変色:湿気を取り込み、塗料の色が変化したり、白化(白濁)することがあります。
・剥離:湿気が原因で、密着不良を起こし、塗膜が被塗物から剝がれてしまうことがあります。
・ゴミブツ:硬化剤がゴミブツとなり塗料内や塗装面に混入・付着することがあります。
2液タイプ以外でも
ちなみに塗料において硬化剤を使用しないタイプの塗料でも湿気などの水分の吸着による硬化の遅延や色
の変色・白化(白濁)の現象は大なり小なり起きますので重ねて注意が必要です。
保管について
また硬化剤は開封後は、湿気に対して非常に反応しやすく、品質が低下しやすいため、保管環境にも十分に注意が必要です。開封後はなるべく早く使い切るか、よく密閉をし、湿気の混入を避けるようにしましょう。
塗料において湿度が天敵であることはご理解いただけたでしょうか?さらに湿気以外にも塗料を扱うときには望ましい条件があります。
<塗料を扱うときの望ましい気象条件とは>
温度・湿度・風速の関係
塗料の塗膜化には温度、湿度,風速などのような気象条件が大きく関係します。一般的に望ましい条件は、以下のとおりです。
気温が10~30℃、湿度45~80%の範囲
これはほぼ春・秋の条件に相当します。(※しかし秋雨などの雨天には注意が必要)
もう少し範囲を広げると塗装方法や希釈剤(シンナーやリターダー)の調整などで
気温が5~35℃、湿度85%以下の範囲でも塗装は可能です。
しかし、気温が5℃以下、湿度85%以上の場合は、塗料の硬化が大幅に遅れ、特に二液形の反応硬化形塗料では反応が進まず、期待する塗膜性能が得られないことが起こります。したがって厳寒低温時には、人工的な加温処置が必要となります。おおよそ冬季は夏季の3~4倍もの硬化時間が長くなります。
作業を避けるべき状況
なお以下の条件下での作業もおススメできません。
①雨天または降雪時
②塗装後1~2時間以内に降雨、降雪が予想されるとき
③気温が5℃以下、相対湿度85%以上のとき
④被塗物表面に結露があるとき(早朝の結露、夕方の降雨など)
⑤炎天下で被塗物の表面温度が上昇しているとき
⑥砂ぼこりが多いとき(風速5m/秒以上の砂塵がたつとき)
注意点のおさらい
・塗装前の準備:塗装する面は、汚れや水分を完全に取り除き、乾燥させておくことが重要です。
・環境:塗装や調色する場所の湿度や温度を確認し、適切な条件下で作業を行ってください。
・塗料の種類:使用する塗料の種類によって湿気への耐性が異なります。製品説明書をよく読んで、適切な使用方法を守って下さい。
<まとめ>
今回のまとめ
塗料の硬化剤と湿気の関係性は、塗料の種類によっても異なります。湿気の影響を最小限に抑えるためには、塗装や調色前の準備をしっかりと行い、適切な環境下での保管や作業を行うことが大切です。またゴミブツの発生は塗装においても調色においても大敵です。当然のことですが、硬化剤を塗料に混入させてしまえば塗料に反応が起きるため長期の保存はできなくなります。以上の点をふまえ塗料を正しく楽しく使いましょう。
[記事を書いた吉田裕志について]
吉田裕志(よしだ ひろし) B型 職人気質
有限会社レインボーペイント代表取締役
調色歴20年、国家資格である単一等級調色技能士、一級塗装技能士を持ち、
今でも調色に情熱を注ぐ
座右の銘 「背中の汚れは調色マンの恥だ」